2025年の世界統合失調症デーに向けて

本日5月24日は世界統合失調症デーとなります。
私たちシルバーリボンジャパンは、この国際デーを多くの人に知ってもらいたいと切に願っており、僭越ながらシルバーリボンジャパンの代表を務める私関は、毎年世界統合失調症デーにまつわる記事を寄稿しています。
その理由としては、シルバーリボン運動の始まりが統合失調症に起因しているからです。シルバーリボンジャパンとして、この日を軽視することはできません。
シルバーリボン運動は、1993年に米国カルフォルニア州のニューポートビーチで産声を上げました。
創始者のジーン・リーシティー氏は、自身の長男が統合失調症を患い、周囲の偏見に苦しめられたことから、統合失調症に対する正しい理解の促進と偏見の払拭を目的に手作りのシルバーのリボンを身近な人に配ったのがその始まりです。
それから32年が経過しました。
統合失調症という言葉を耳にする機会は増えたかも知れません。何となく聞いたことがあるという人が増えたのであれば、考えようによっては事態が少し前進したと言えるのかも知れません。
しかし結論から申し上げると、私は統合失調症に対する偏見(以降スティグマと表記)がなくなっているとは思えません。
なぜ統合失調症に対するスティグマがなくならないのだろうか。
もちろん複合的な要因はあるように思いますが、私は前述した問いに対して、統合失調症という言葉が持つイメージ(印象)に問題があるのではと考えました。そしてそのイメージこそが、スティグマが生み出される構造に、相応の影響を及ぼしているのかも知れません。
例えば、情報や経験が不足している人が持つ統合失調症と、それらをしっかり持ち合わせている人の統合失調症のイメージには、乖離があるように思います。
また、同じ統合失調症の当事者でも、苦しみの渦中にある人と、そこから状況が改善し、前向きな気持ちを抱けるようになった人とでも、その病気に対するイメージは異なるのではないでしょうか。
社会や世間が抱く統合失調症のイメージに関して言えば、まだまだ多くの人が以下のようなイメージを抱いているように思います。
統合失調症=治らない病気。
治るという言葉の定義は人それぞれ異なると思うので、ひとまずその議論は置いておきます。
そして精神保健医療福祉領域では、「リカバリー」という言葉(概念)が用いられていますが、前提として統合失調症のリカバリーには相応の時間を要することは否定しません。
しかし統合失調症の当事者でも、リカバリーをしている人はそれほど珍しくありません。ちなみにリカバリーの概念は、臨床的、社会的、パーソナル等ありますが、それぞれの概念においてもリカバリーをしている人は存在します。
私の知り合いにも、統合失調症を発病して入院した経験がありながらも、リカバリーを果たして国や各自治体に対し論理的で質の高い政策提言をしている人、政治家になった人など、世間的なイメージと異なるような活躍をしている人もいます。
だから私は、「統合失調症=治らない病気」のようには思っていないのです。
それと統合失調症は100人に1人の発病率となり、誰にでも起こり得る可能性があることから、何か特別な病気のように思っている訳ではありません。(無論、統合失調症を軽視している訳でもありません)
統合失調症=治らないとのイメージこそが、その病気を重く暗く想起させることにつながります。そしてそれがスティグマを助長させ、当事者のレジリエンスを妨げることにもつながるのではないでしょうか。
統合失調症に限らず精神疾患全般に当てはまることですが、リカバリーに向かうまでには相応の時間がかかりますし、その苦しみは疾患そのものからもたらされるだけでなく、社会生活から遠ざかることによる弊害や負担、スティグマからもたらされる負担など、当事者や家族は様々な事柄に苦しめられたりしています。
また、当事者や家族を支える支援者だって、思うように事を進められない無力感ややるせなさを感じることもきっとあるでしょう。
今まさに厳しい状況にある人からしたら、同じ病気でありながらもリカバリーを果たした、もしくはそのように見える人に対して、好意的な印象を抱くだけではないでしょうし、場合によってはあの人は自分と同じ病気ではないと思うこともあるかも知れません。
少し話が逸れますが、病名は医師の診断により決まることですから、裏を返せば医師によって病名が異なる場合だって珍しくありません。
例えば統合失調症では、症状が難治性うつ病や非定型精神病、双極性障害などと類似することもあるから、上述したことが起こり得る可能性もあります。
故に病名に捉われるよりも、その人の状況が前に進むこと。その人の気持ちが上向くこと。それを目指すことが何より重要となるのではないでしょうか。かすかでもそれを積み重ねていくことによって、気付いたらリカバリーが実現できていた。そんなことだってあるように思います。
リカバリーやレジリエンスの足かせになるスティグマをなくしていくこと。スティグマを生み出すことにもつながりかねない統合失調症(精神疾患)のイメージを変えていくこと。
私たちシルバーリボンジャパンは、それを実現できるよう、これからも真摯に粘り強く、アンチスティグマ活動を展開してまいります。
2025年5月24日
特定非営利活動法人シルバーリボンジャパン
代表 関 茂樹